第96章 【番外編】なんて嫉妬深い王子様
口にふくまれる冷たい水で目を覚ました。
制服を着せられ、鞄も教室から持ってきてくれたようだった。
少しの間でも肌を出したまま眠っていたせいか、寒気がした。
待っていてくれた繋心さんは、無愛想に、はよ、と言ってくれる。
「!!」
後夜祭の音楽が聴こえて飛び上がる。
「…っ!しまった…!各教室の点検と…えっと…」
「それは、平気…」
「え!?でも……」
「サボってた本来の実行委員がやってた」
引き受けた仕事を放棄してしまった罪悪感が一気に襲う。
明日、なんて言われるだろうか……。
「あ!ど、ドレス…」
「返してきた」
「……すみません…」
自分の仕事もあっただろうに、繋心さんは私が寝てしまっている間に、私の気にしそうなことを全て片付けてくれていた。
身の縮む思いだった。
「後夜祭は、別に仕事してねえんだろ?」
「あ、はい…」
手を差し出してくれて、立ち上がるのを手伝ってくれる。
腰がずきりと痛んだ。
「帰るぞ」
「…うん」
後片付け兼ねての登校だった。
演劇部と文芸部に申し訳ないと思い、片付けついでに顔を出した。
「凄く怖そうなヤンキーがドレスを返しに来た」
「ついでに君の荷物をまとめて出ていくからビックリした」
と矢継ぎ早に言われる。
なんと返事したらいいかわからず、苦笑いを浮かべる。
「でも彼氏だってすぐわかったから……」
恥ずかしそうにその答えが戻ってきて、どきっとした。
「な!?ど、どうして……」
「だって、黒い服にファンデががっつりついてて…」
「…!!!」
やらかしてしまった…。
あまりの恥ずかしさに踞る。
最後に部長さんは、代役にしてすまなかった、と丁寧に謝罪してくれた。
「それは仕方な…」
「と、彼に謝って欲しい。
物凄い形相だったから」
「………はい」
少し、複雑な気持ちになった。