第94章 【番外編】旅行先を決めよう
「どこにしましょうか?」
深夜に自分の膝の上で楽しそうにパンフレットを広げるるるは、振り返りながら見上げる。
式場の……とかではなく、旅行のらしい。
(……可愛い)
既に缶を二つ三つ空にしてしまったせいか、ますますその姿が愛くるしく思える。
「もう、聞いてますか?」
「聞いてるって。任せるっつったろ?」
「せめて県内か県外かだけでも一緒に考えましょうよぉ」
相当楽しみなのか、怒っているような口調なのに全然楽しそうに聞いてくる。
ゴールデンウィークなんて結局どこも混んでるし、悲しき小売り業界の性、休みなんて取れそうにもなかった。
やっと片付いてから深夜に同じベッドに入る、なんて感慨深いことをしてみれば、うとうととしながら待ってくれる彼女。
「どこも行けなくて悪ぃな」
「いえ、どうせ人混みでどこ行っても疲れちゃいますし」
そうか、と返すと嬉しそうに手を握られる。
「こうしてるだけで幸せです」
その可愛い仕草にいつもどきっとさせられる。
「連休明けたらどっか行くか」
「ほんとに!?」
「なんだ、行きたかったんじゃねえかよ」
笑いながら額を小突くと、照れ臭そうに笑う。
「ここも賑やかで楽しいんですけど、二人きりになりたかったなぁ、なんて……」
実家に二人で入ってから、そういえば休みもほとんど全員で過ごしているか部活に行っているかだった。
可愛らしい口調と、切ない内容に違う意味でどきっとする。
「どこにしようかな…。ふふ、楽しみぃ。
明日パンフレット貰ってきますね」
「ほどほどにな」
楽しそうに笑うるるに優しく口付け、手を握ったまま眠った。