第92章 【番外編】終着点
卒業式を終えてすぐ、私は繋心さんのご実家にまた住まわせて貰える話になった。
このまま新しい家を探しても良かったのだけれど、あたたかいその歓迎をひとまず受け入れることにした。
その報告と、袴姿が見たいというおばさまの熱い声に答えるべく、一度訪ねることになった。
「おめでとう」
「……ありがとうございます、でも、おじさまとおばさまのお陰なので…」
「お礼は孫でいいわよ」
「…うぐ…」
そんなお返事がくるとは思わず、変な声が出てしまう。
久々の猛くんはますます大きくなっていて、相変わらず私を睨み付けている。
「た、猛くん…」
「るる姉は…徹を捨ててくんだ…」
「す…!」
(こ、こどもかぁ……)
帰りに急に冷静になった。
今まで子供とちゃんと接してこなかった。
そして自分の幼少期。
親にどんな接し方をされていたか、と思い返せば、既にそこに家庭の温もりというものはなく、商品と売人の関係。
果たして、自分が家庭に入ることなんて出来るのかと急に頭が冷えきってしまった。