第89章 【番外編】いつもどこでも【一周年記念】
「あ!制服だー!」
繋心さんの実家に泊まって荷物の整理をしていた。
懐かしい荷物の中から、クリーニングされたばかりのブレザーとスカートが発掘される。
特になんの変哲もない制服だったけれど、思い出が詰まっていて、それなりに気に入っている物だった。
徹さんから逃げるのに必死だったり、ホームレス生活をしてしまったり、そして最後の1年、それは濃厚な生活をした……。
色々思い出すと、なかなか恥ずかしい…。
「お、懐かしいな」
「ですよねぇ!」
お風呂上がりの繋心さんが後ろから声をかけた。
「そうだ、学ランがどっかにあったな」
「学ラン!?」
「あれ?卒業生って話はしたよな?」
「うん、でもイメージにないから、びっくりです」
繋心さんも押し入れを覗き、心当たりのある場所を漁ると、そこからビニールに包まれた制服を取り出した。
「懐かしいなー」
「着てるとこ見たいなぁ…」
「もうオッサンだぞ?」
「そんなことないですよ!
こう、雰囲気だけでも…」
「じゃあお前も着ろよ」
「え!?私のは新鮮じゃないです!」
「いいから着ろよ!」
「もう…」
押しきられて仕方なく部屋着を脱いで制服に袖を通した。
クリーニング屋さん独特の、ぱりっとした仕上がりと温めた布のにおいがする。
スカートのホックもすんなり止まった。
二人で暮らし始めてから太ったと思ってたからちょっと安心。
リボンを止めて、最後にブレザーをゆっくり羽織った。