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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第88章 【番外編】ソレイユ





「繋心さん……」
「悪かったって…」
不機嫌そうな声で名前を呼ばれるのは、何回あってもどきっとする。
「ひどいです……」
「まあ、寝てたからな……」
「むぅ……」
宿から歩いて十何分、そこの海から見える初日の出は絶景だそうだ。

起きられたのならば。

るるを何回か起こしたが、寝ているというよりは、意識が飛んでいる、に近かった。
(やりすぎた…)
と反省したのは3時を過ぎた頃合い。
真っ白な肌はほんのり赤く、汗でぐっしょりと湿り、額に張り付いた髪を払ってぐったりした身体を起こした。
「るるさん、支度しねえと間に合わねえべー」
と頬を叩いてみたが、完全に飛んでいる。
呼吸も脈もあるので心配はないが、仕方ないと部屋の風呂まで連れていった。
シャワーを被せても浴槽に入れても起きない。
いつも通りに綺麗にしてから、諦めて寝かすことにした。
起きてからさぞがっかりするだろうと、こっちまで悲しい気持ちになった。

「また来年も、一緒に来てくれますか…?」
るるは様子を伺うように、潤んだ瞳で聞いてくる。
「来年も、次の年も、何回でも付き合ってやる」
くすくすと笑われ、漸く許して貰えた気持ちになる。


うちに着くと年賀状に混じって不在票が入っていた。
申し訳ないと思いつつ配達してもらうと、新生児グッズのセットだった。
「あ!母ちゃん!」
思い当たることを思い出し、冷や汗が流れる。
今年は親戚に顔を出すまい。
怒られるのが目に見えている。
届いたものをそっと押し入れにしまい、見なかったことにした。
次に親に旅行券を渡されたら断ろうと、固く誓った。
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