第88章 【番外編】ソレイユ
チケットは年末年始の隣県旅行だった。
初日の出ツアーらしい。
なるほど、それでくれたわけか。
親戚が多いうちは抜けたら大騒ぎだろう。
自分達なら言い訳も聞くだろう。
「ぜひ行きたいです!」
と明るく彼女もそう言ってくれた。
冬休みに入ってからずっとバイト続きで、空いている時間は大掃除を少しずつしてくれたらしい。
いつもより新鮮な空気で、鍋焼うどんをつついた。
小さなビール缶を開け、実にいい気分で計画を立てた。
すっかり熟年夫婦のようで、なんだか寂しさもある。
結婚してもなんら変わらないであろう生活が、若干切ない。
「繋心さん、いつも時間を下さってありがとうございます…」
そんなうっとりと言われてしまえば、こちらは何も言い返せない。
前言撤回。
死ぬまで新婚気分を貫いてやろうとこっそり誓った。