第87章 【番外編】キャンドルの灯
人混みが苦手だからと避けてきたけれど、案外行ってみれば道もほとんど空いてて、薄暗くなった会場は人の影をポツポツと照らしているだけだった。
寒さ対策はしたせいか、顔がひりっと冷たいくらいで、大きな平野を歩くには少し暑いくらい。
パンフレットで見た数百倍は綺麗だし、何よりいつもこういうことに誘ってくれない彼が隣にいると思うと何よりも嬉しく、ついつい緩む頬を引き締める。
前日はそれはもう入念にプレゼントを悩んで買っておいた。
渡すタイミングはすっかり見失っている。
住んでいるところが同じ、というのはこういう場合すごく難しい。
わざわざここで渡す意味はあるのか?
とか思ってしまう。
(家でよくない?とか言われたら…切ない…)
「……っ」
「鞄持ってきたのか?」
「…っ!!」
さっと取られそうになったのを慌てて持ち直してしまった。
「お手洗い行くときとか、いるじゃないですか!」
「…あ、そうか」
納得してくれてよかった…。
ラッピングの一部が少し出ていてバレるのではないかとひやっとした。