第81章 【番外編】幸せになります
家族皆に、認めてもらいたいと。
そのくらい素敵な人を好きになったんだと。
そう言いたいのに、どこか遠慮してしまって。
一応は血縁者なんだろうけど、やっぱり私は部外者なんだと認識してしまう。
「何してんの?」
徹さんが部屋から来て、冷蔵庫から何かを出して飲んでいる。
「……考え事」
「あそ」
「猛くん、どうしたら繋心さんに打ち解けられるかなって」
「バカじゃない?」
「……そうかな」
徹さんらしい嫌みな口調がちょっとイライラする。
でも、懐かしい。
「るるが思っている以上に、皆誰かに獲られるのが寂しいと思ってんだよ」
「…そうなの?」
太い縁の眼鏡をかけ直して隣に座る。
「猛も、さわやかくんも、トビオちゃんも岩ちゃんも、他の奴も」
「……」
「……俺も」
「……そっか」
テレビの画面がニュースになり、日付が変わったことを知らせる。
ぼんやりと浴びるブルーライト。
懐かしい香りに包まれて、新鮮な話をしてくる徹さんは、意外だった。
「だから、アイツには何しても、ムカつくし、ブッコロしたい」
「ぶ……」
「打ち解けるとかは無理」
「でも、私、皆が喜んでくれないと、寂しいなぁ」
徹さんは反省したような、申し訳なさそうな顔をしながら、私から目をそらし、
「それは無理、ごめん」
と小さく謝られた。
それが、なんだか可愛くて、いい人だな、って思った。
「私、ここには居場所がないって思ってたから、嬉しいな。
じゃあ、打ち解けようとか思わないでおく。
この傷が私の居場所だから…」
「………」
「……ね」
「キモ」
「もー……」
万人に好かれるのはやっぱり無理でも、それが、私の存在してもいい証明になるなら、それでいいかなって。
そう思えた1日だった。