第80章 アップルアンドシナモン終
見送りがてら、駅前まで向かった。
適当に飯を食って、一息ついた。
残念ながら、木兎は二日酔いであまり食えていなかったが。
宿泊先まで案内して、また帰るときに会う約束だけした。
「あのね、聞いた話なんですけどね。
人って、運命の人と似ている人を好きになりやすいんですって。
だから、そうなんだと思います……。
でも、多分私にしかわからないくらいの、なんですけどね」
「好きだったんだな?」
「……ちょっとだけ…」
るるはまた、いつもの気まずそうな顔をした。
「繋心さんも、他の人、私に似てました?」
「俺はお前と違って浮気性じゃねえから」
そう言いながら、ぽんぽんと頭を叩いてやる。
「あ!ずるい…」
「そういう運命とか、あんま信じる方じゃねえけど、るるとはそれでしか会えなかった気がする」
「っ!」
その日一番、というより、出会ってから一番の赤面を見れた気がする。
嬉しそうに見上げたその顔は、やっぱり可愛い。
劣等感やコンプレックスに苛まれる日はいつだって続く。
それでも、たった一人、好きだと言ってくれる奴がいるだけで、余裕が生まれるものだ。
特にそれが、ちょっと変な恋人だったとしても。
「繋心さん…、昨日、足りなかったので…今日は……」
「帰ってからにしてくれ」