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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第9章 ケータイとイルカ


館内から出ると、タイミングよくイルカショーが始まった。
日曜だというのに、席には余裕があった。
跳び跳ねるイルカを見ていると、何故かバレーのことばかり考えていた。
今日はそういう日じゃない、とるるを見ると、彼女は俺を見ていた。
「部活のこと、考えてたでしょ」
「…悪い、そういう日じゃねえべな…」
「部活のこと考えてる繋心さんの顔、好きです」
「……おぅ」
「すごく真剣で、かっこいいです。
教えてるときも、悔しいくらいかっこいいです。
いいなぁ!みんなあの顔に怒られてるー!って…」
「あ?いつも真剣じゃねえって?」
つい照れ臭くて、誤魔化して声を荒げる。
「ふふ、うん。
だって車でもお部屋でも、エッチな顔しかしてないです」
口元に手を当ててくすくすも笑いながらるるは答えた。
柔らかな声が耳を擽る。
「真剣に、エロいこと考えてんだ。
この後どうやって持ってくか、どうやって侵略してやろうかって」
「そういう顔も好きです」
ストレートな言葉が身に染みる。
心臓から熱い血が作られてるようで、一気に熱くなる。
「今にみてろ、立てなくしてやる」
「やだっごめんなさい!」
恥ずかしそうな目は困っているのに、どこか熱を帯びているようで、見ているこっちがドキドキとする。
同じ年齢だったら、もっと一緒にいれただろうか。
もっと同じ目線での話が出来たんだろうか。
なんだか悔しく思えて、あー、と苛々した声が勝手に出ていく。
「繋心さん、好きです」
何を悟ったのか、握った手をきゅっと優しく包まれる。
「…ああ」
後ろにはもう誰もいない。
黙って唇を奪えば、正面の劇場では、跳ねた2匹のイルカが綺麗にハートを作っていた。
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