第76章 【番外編】推しが尊すぎて直視出来ない
「いい加減見ろよ」
そういう日は、夜も恥ずかしくて、無理やり顔の手を引き剥がされる。
「ごめんなさい、本当に…!
明日なら、大丈夫ですから!」
「ったく…」
好きな気持ちが溢れて、なのに、そういうコトをさせられると、生きた心地がしない。
「繋心さん…っ」
触れられた箇所からどんどんと熱くなっていく。
我慢なんてとうに出来ないのに、心は矛盾するかのように先に進むのを拒む。
「好きすぎて、死にそうです……」
「死なねえよ」
くすくすと笑われて、いつもの大きくて乾燥した手のひらが、私の身体を器用に触っていく。
「あ、あ…っ」
「すっげぇ脈打ってる」
首筋に宛てられる手。
また笑われて、なんとか顔を見ようとしてくる。
「目、瞑ってていい」
「……うん…」
手からゆっくり力を抜いて、大人しく顔から取られ、ふわりと煙草のにおいが覆い被さる。
それだけだというのに、私のお腹の奥がざわざわと騒いでしまって、無意識に爪先に力が入ってしまう。