第73章 【番外編】夏の夜の夢4
朝には及川はいなかった。
なんとか帰れたのならいいが。
洪水の心配もなさそうなほど道路は乾いていた。
木や葉の屑が道を埋め尽くしており、掃除当番は大仕事だと思った。
昼には手伝ってやるか。
ふと居間のちゃぶ台を見ると、1枚のハガキがあった。
「年賀状?」
今更?もう8月なのに?
しかし、そこにびっしり書かれた文字を見て、及川が出しそびれた物だとすぐにわかった。
そこには今までの謝罪と、及川の両親が心を痛めていることと、最後に告白が書かれていたが、全部二重で訂正をし、短く『お幸せに』とだけ付け加えられていた。
及川とるるなりに、一歩進めて、これはこれでよかったのかもしれない。
「朝だぞー、起きろ変態」
さあ、後はコイツに昨晩のことをたっぷり説教せねばなるまい。
偶然と偶然が重なった堂々巡り。
それはやがって、迷い道を一本に正す。
まるで、妖精たちが見せた夢が導いたように。