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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第68章 【番外編】泡沫のクリオネ


「お客様ー、いかがですかー?」
「…あ、えっと……」
今年の服はシースルーが流行りだ。
めちゃくちゃ可愛い!と思うものは、大体透けている。
見せブラも流行っているせいで、背中すけすけなんていう可愛らしいスタイルも可能だ。
「さ、サイズが…ちょっと…」
「他のサイズお持ちしますか~?」
「あー……でも、大丈夫です…」

「見せブラ可愛い…!レースキャミも可愛い…!」
ショーウィンドーを見ながら怨めしそうに私はそう叫んだ。
「着りゃあいいだろ別に…」
「背中丸見えなんですもん…」
「そういう服なんだろ?」
呆れたように繋心さんはそう言う。
「つーかあんな格好で外歩く気だったのか!」
「可愛いんですもん…」
「ダメだダメだ!あんなふしだらな…」
「もう!お父さんですかー!?」
「お前ただでさえ変なのに狙われ易いんだから!
そこんとこ自覚して自衛しろよ!」
「失礼な…!そこまで変なのじゃ…」
繋心さんは、カウントを取りながら、一人一人名前を挙げていく。
「及川、変な先生、変なバイト、変な…」
「わぁ……」
自分でも呆れて変な声が出た。

休憩に、高級チョコのドリンク店がたまたま来ていたので、初めて口にする。
ひんやりしたフラペチーノは、思ったよりも甘い。
「でも、夏らしい服、凄く憧れなんですよね…。
あとプールデートとか、海デートとか…憧れます…」
「お前が気にしすぎなんだって」
「んー…でも気になるんです…」
去年も結局パーカーを脱ぐことすら出来ず、皆がはしゃいでいるのを見つめることしか出来なかった。
「よっしゃ」
繋心さんはドリンクカップを潰しながら立ち上がり、ちょっとだけ楽しそうにくず籠に捨ててから振り返った。
「水着、買ってやるから着ろよ」
「え、え!?」
「俺の好みの水着を買うから、それを着ろ。
したら何がなんでも海かプールに行くだろ?」
「……」
ハードルが高い!
いきなり逃げ道を失う提案をされる。
戸惑いのあまり、甘さでむせる。
「ちょ、ちょっと、待って下さい…!
そこは私が選んで…」
「お前が選んでたら一生終わらねえだろ!」
「あう!」
それはごもっともだ。
少しでも見えるものは、大体いつもボツにしている。
それはもう、限りなく、ハードルの高いことを言われている。
「あ、あんまり、見えるの、イヤですからね?」
それは背中の話だけじゃない。
全体の問題だ。
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