第66章 【番外編】極夜2
「繋心さん、どこ行ってたんですか?」
「飲んでた」
俺の部屋で勉強するのも日課になりつつある。
これもよくわからない行動の一つだった。
今までは自室に籠っていたはずだ。
急にである。
「お帰りなさい」
とびきりの笑顔で見上げながら言われ、慣れてるにも関わらずどきっとする。
「そろそろ部屋でやればどうだ?
煙草くせーだろ」
「いやです」
「……そう」
着替えて腰かけ、早々に膝に乗られる。
馬乗りになると、柔らかな太腿がこちらの身体に触れ、緊張する。
(何日禁欲してんだっつーの)
ムカつきながらも、うっとりと甘えてくるその顔を見ると、怒りがおさまるのが不思議だ。
惚れた弱みはでかい。
ゆっくりと胸に顔を沈められ、嬉しそうに見てくる。
『浮気してるとか?』
さっきの言葉が反芻する。
もしそうなら、潔く切って欲しい。
喪失感は、果てしないだろう。
それでも、コイツの為を思うなら、俺よりいい男を探した方がいいとは思う。
「るる、他に好きな奴でもいんのか?」
単刀直入に聞いた。
そうならそうだと、言って欲しい。
「…っ!!」
一瞬険しい顔になる。
アタリか?
「…そんなの、いません…。
なんで、ですか?」
「最近、おかしいから…」
「……お、おかしいですか?」
少し慌てる姿が気になる。
段々と確信を持って疑い始める。
「ごめんなさい……その…、いろいろあって……」
「その色々に、他の野郎が関係あんのか?」
「ま、待ってください…、私、今、いないって……」
「じゃあ、今、ヤれるか?」
「っ、それは………出来ません……」
その言葉にイラっとする。
勿論、彼女のことは心底溺愛している。
だから、そういうのナシでも成り立つ関係だとは思っている。
だが、言葉で、しかもこの状況で断るのは、今の自分には信じがたいことだった。
「出てけ」
「……っ、ごめんなさい……」
自分の物をまとめ、るるはせかせかと自室に戻る。
胸糞悪い。
あんな申し訳なさそうにしやがって。
なら最初からやるなっつーの。