第63章 【番外編】鵺2
「繋心さん、おかえりなさい」
「おう」
るるはいつも通り、台所で簡単そうに料理を作り、今日の出来事を言いながら並べてくる。
毎日のことだが、その瞬間がいつもどことなく癒しを感じる。
「あ…!」
何かを思い出したかのように声を上げ、しまった、という顔をする。
「ご飯にしますか?お風呂にしますか?」
「……一個抜けてる」
「……あれ?え?
これ、有名な台詞なんですか?」
「……」
わかってないで言ってたのかよ、と頭をかく。
「どこで覚えてきやがった」
「同じゼミの子が、言ってみたら?って、教えてくれたんです!
彼氏に言ったら喜ぶって聞いたんですけど…、選択肢、足らないですか?」
キラキラと嬉しそうな笑顔がこちらに向かってくる。
そして、困ったようにもう一つの言葉を模索する。
「んーーー、お酒?煙草?お茶…?」
こんなベタな台詞すら知らないのに、馬鹿みたいにはしゃいで、何をやってんだと部屋着に着替えながら笑った。
効力が出るのは飯が終わってからか?と貰った小瓶に手をつけ、一気に仰いだ。
今日は見てろ、なんてニヤニヤと企むように含み笑いをしていたのに、あっという間に体内の熱が上がる。
(マジか……)
飯とか風呂とか言ってる場合じゃなくなってきた。
後ろから考え事しているるるに近付き、
「お前だー!!!!」
と脅かして羽交い締めにした。
「きゃあっ!!?」
と悲鳴が上がったが、すぐにこちらを見て思い出した!という表情をする。
「あ、それです!」
と嬉しそうに笑う。
エプロンを付けたままの軽い身体を抱え、すぐに寝室に向かい、ベッドに下ろした。
「え?ほんとに……?」
最早掲示された2択すら無視している。
困惑した顔をするのは当たり前だ。