第62章 【番外編】些細な幸せ
少しだけ、光のさす空を見る頃に、私はやっと綺麗になった身体を横にした。
朦朧とする意識の中で、菅原くんの言葉を思い出す。
「私が、繋心さんの友達の女性とか、昔の恋人に嫉妬するのって、嬉しいですか?」
すると、驚いたような顔をされて、しばらく沈黙が流れる。
そんな変なことを聞いただろうか……?
「……も…言った…」
彼らしくもなく、小さな声でごにょっと呟かれる。
聞き取れなくて、え?と聞き返しす。
「…前も言った」
「………なんて?」
「もっと、妬けって」
なんで、こんなたった一言が、私にとって泣くほど嬉しいんだろう。
あまりにも強くて醜い私の独占欲を、全て赦してくれる言の葉。
髪を撫でてくれる指には、同じ指輪。
あまりにもその些細な幸せが、噴水のように吹き出ては循環する。
「嬉しい……」
手を重ねれば、私の指の宝石が虹色に光った。