第62章 【番外編】些細な幸せ
『本人に聞いてみたら?』
なんて、菅原くんはそんなことを言った。
家に着いた私に、繋心さんは口を聞いてくれなかった。
ただ、黙って押し倒されて、キスされて、どう答えていいかわからないうちに流された。
「…っ!んっ」
いつもより煙草の味が強いし、ほんのり、ビールの香りがした。
何か、イヤなことでもあったのかな?って、不安で優しく背中を撫でる。
硬い筋肉の背中が、愛しくてたまらない。
拗ねたような表情をして、胸元に顔を埋められる。
母性本能のようなモノが、その表情にそそられて、あたたかいものと一緒に腰にくるようなゾクゾクとした疼きが湧いてくる。
「ど、したんですか?」
息を詰まらせながら、そっと、なるべく優しく聞いた。
「別に」
「んんっ!うそっ…!」
ちゅっ、と下着越しに先端を吸われて、すぐに感じる正直な身体を持て余す。
「あ、ひぁ…!ぁ、妬いて、くれてるんです?」
今日の予定は昨日きちんと確認したはず。
「うっせ!」
「きゃぁっ!!?」
きゅっと犬歯で噛まれると、思わず身体が弓なりになる。
「はぁ、あっ、あっ!」
「悪いかよ…」
「ううん、すごく、うれしい……」
その言葉だけで、どろりと熱が溢れてくる。
大切に思われていると思うと、身体が欲しくなってくる。
それは、いつもこの人だけで、いつも不思議で仕方ない。
繋心さんに言われた言葉が、どの言葉でも、気持ちよく私の身体に染み込んでいく。
自ら下着を剥いで、咄嗟に繋がりを求める。
「も、ほしいっ…!」
「くそっ…」
慣れ親しんだ圧迫に、目を細めて感じる。
水中にいるかのような、ふわふわとした快感に浮いている。
「ああぁぁ…っ!!いい…ん、ふ…っ」
「く…っ!」
「ああっ!あっ、はっ、んっ…、やぁっ、そこ、そこぉっ…!!」
いつもより少し激しくその壁をコツコツと叩かれて、すぐに果ててしまう。
きゅっと絞めると、胎内がそのカタチになってしまうような錯覚。
まるで、取り込んでしまいそう。
ぐりぐりとまた違う弱いところを抉られると、私の穢い身体は、シーツに水溜まりを作ってしまう。
「やぁあっぁぁあ!!!」
労るように背中に触れられる。
穢くないって言われているようで、すごく嬉しい。
感じてしまう。
「しめ、すぎ…っ!!」
「ああっ!!だって、しぇなかぁ……、ぁあああ!!」
避妊具越しに、どくんどくんと、脈打つのが伝わる。