第62章 【番外編】些細な幸せ
るるさんの指にきらりと光る石が嵌めてあった。
それは、牽制か、それとも本物か、気になってつい聞いてしまう。
「結婚、したんだ?」
いざ言葉にすると、それが突き刺さるように自分に戻ってくる。
まるでブーメランだ。
「ち、違うよっ!
その、私の我が儘、みたいなもので……。
なんかね、周りの女の子、みんなライバルに見えちゃって、いつも妬いちゃうから……」
るるさんは恥ずかしそうに紅茶を口につけ、少し熱かったのか急いでカップを戻した。
その拍子にソーサーにこぼし、ナプキンを取ろうとして、身に付けているストールでカップを倒し、一杯200円の紅茶を流してしまった。
その一連の動作を、なんて可愛いのだろうかと、見入ってしまった。
今日会ったのは、テスト勉強の付き合いだった。
同じ学科を取っていたので教えようか?とかなり無理やり会う口実を作ってしまった。
教授も違うし、使っている本も違うだろうし、こんなことで呼び出して来てくれるとは夢にも思わなかった。
なんとか会えたのに、その指を見た瞬間の自分のぬか喜びときたら、メッセージを送信した一昨日の自分を殴りたいほどだった。