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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第61章 【番外編】オレンジピールとデート


美容院で数センチ切った髪を把握しろと言ってくる女達には、腹が立ったりしたものだ。
そんなんわかるわけねーだろ、わかるよーに切れよ、等々、思うことは沢山あった。
髪色を変えたと言っても、ほとんど変わらないというのに、気付けと言ってくる。
なんて煩わしいんだろうか。
そのいい加減な性格もあって結婚がどーのなんて親に言われている訳だが、実際、可愛くて仕方がない女が出来ると、そんな変化の違いなんて容易くわかるものだと学んだ。

オレンジの皮を剥いたような、爽やかな酸っぱい香りがし、るるの髪はつやつやにまとめられており、少し目にかかっていた前髪が整えられていた。
さらに毛先は綺麗にセットされ、昨日の5倍は可愛く見える。
「雰囲気、違うな」
「友達の紹介で、急に美容院連れてかれて……、わかります?」
「ああ、全然違う」
かわいい、の一言が照れ臭くてどうにも言えない。
今日は店も学校も休みで、1限だけ受けたるると久々に出掛ける約束をしていた。
待ち合わせ場所での第一声だった。
「そんな、切ってないんですけど…」
恥ずかしそうに見上げ、毛先を触る。
「あ!でもこの後デートって言ったら、綺麗に巻いていただいたんですよ!」
ほらほら、とくるりと回って後ろも見せてくる。
可愛いの押し売りに屈したいのに、やはり照れで言えない。
「いい感じだな」
「よかった」
嬉しそうに笑顔が溢れる。
これ、可愛いって言ったらどのくらい照れるんだろうかと思ったが、今更で言いにくい。
「ほら、行くぞ」
「うん」
と甘い声と共に絡む指が熱い。
それすらも照れ臭くて歯痒い。
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