第57章 【番外編】円環
「おっす」
「おう」
その日お店で待ち合わせしていた私を待ち受けていたのは、凄く仲の良さそうな女性だった。
飾らない、でも綺麗なその人は、ボーイッシュな印象で、私とは正反対の可愛らしい人だった。
「あ、噂のカノジョ?」
「るるだ」
「は、はじめまして…」
「うわー、勿体ないくらいの美少女じゃん」
「だろ?」
二人に褒められ、思わず赤面する。
「趣味変わったんじゃない?」
なんて言いながら彼女は繋心さんの肩に触る。
「別に」
繋心さんはそれを払おうともせず、当たり前のようにそのままにする。
一瞬だけ、にやりと笑われた気がした。
(気のせい、かな?)
爽やかそうな人で、そんなことするはずないって言い聞かせて、モヤモヤしたままそれを見ていた。
(わ、私がどうこう言う権利もないし……)
たかがほんのスキンシップに何を妬いているんだろう…と思い直すことにする。
「コイツ、昔馴染みで、野郎と混ざってよく遊んでたんだ」
「女の子の友達、少なくてね」
くすっと笑った姿も妖艶で、すっと繋心さんの腕を引く。
とても自然な動きにモヤモヤしていく。
「で、相談は?」
「あっ…と、今度飲み屋で」
(相談事…?)
こっそり会って、なんの相談を?
というかそれは私には出来ないことなの?
なんて、少しイライラしながら聞き耳を立てる。
(うわ、私、可愛くない……)
聞こえないようにお店の外に出て、適当に飲み物を買った。
ボタンを押し間違えて、ほかほかのコーンスープが出てくる。
(うう……ダブルパンチだ……)
炎天下で濃厚なコーンクリームを啜りながら、のんびり考える。
確かに色んな女性がいて、色んな形の嫉妬をしてきたけど、今回は今まで以上に自己嫌悪に陥るレベルだ。
自分の醜さに愕然とする。
でも、でも、相談をするくらい仲が良いって何…?
私には出来ない相談なの?
「じゃ、またくるよ」
「おー」
先に出てきた彼女が一瞬だけ、私に笑う。
なんとなく、イヤな笑なんだけれど、上手く表現できない。
会釈をして誤魔化した。
「お、お前、それ暑くね?」
「……暑いです……」