第56章 【番外編】寂しくないように
熱い湯船に白い肌が赤く染まる。
ぼーっと余韻に浸る彼女に、試しに聞いてみた。
「…いつ、結婚とか、したいんだ?」
るるは驚いたように振り返り、髪をいじりながら元の体勢に戻った。
付けたばかりの印が赤く花が咲いたように綺麗で、こっそり自己満足する。
「繋心さんがしたい時…」
「はぁ?」
「私が一番綺麗に見えた時、プロポーズしてください…。
何年でも、待ってますから……」
難しいことを言うな、と苦笑いする。
常に愛しさの記録が更新する中で、どのタイミングがベストかなんて、もうわからない。
「お前が他に目移りしたらどーすんだ?」
「絶対しません」
るるは怒ったように張りつめた声で言う。
「寂しくないようにしてくれるんでしょ?」
「……だな」
だから、連絡先もそのままだし、何かあれば駆けつけるのは、俺だけでいい。
嬉しそうにすると、また花の香りが鼻腔をくすぐる。
「お風呂でたらもう一回……」
「寝てろよ病人…」