第7章 本音とオレンジジュース
四畳半の空室にるるの少ない荷物が運び込まれる。
制服と鞄と少しの私物。
居候させてもらっていたのもあってか、ほとんど自分のものはないそうだ。
アホな親は大喜びで歓迎会を開き、何故か呼ばれた同級生のいつものメンツが揃っており、
「婚約者よ」
と会場に爆弾を投下した。
ひきつった笑いしか出てこない。
居間で全員酔っ払うと、いつものようにグダグダと俺の部屋へ集まり、下らない話で飲み直していた。
案の定話題はるる中心の質問攻め。
「いいなぁ、合法で女子高生…」
などと散々恨めしい言葉を投げられた。
るるは邪魔しないようにか、部屋の本をひっそりと読んでいた。
「るるちゃんもちょっとオジサンたちと話そうよ?」
「やめろよ…」
「いいんですか?」
嬉しそうにうさぎみたいに跳ねながら、この汚い輪の中に入ってきた。
「余計なこと聞くなよ!おめぇは答えるなよ!」
と両者に釘を刺しておいたが、果たしてどのくらい聞いてもらえるのか。
酔いが覚めそうだ。
「オレンジジュースでいい?」
「わぁーい、かんぱーい」
甘い鼻にかかった声でコップを受け取ると、楽しそうにした。
「明日も学校だから、すぐ帰れよ…。
ったく、おめぇもいちいち乗るな」
「ふふ、繋心さんの昔のお話、聞きたいです」
「おー、いいよいいよ!
小学生ん時に漏らした話とかすっべ?」
「おい!」
「えー?恋バナはないんですかー?」
「聞くなって!」
るるがジュースを飲みながらのりのりで話にのっかろうとするのをなんとか止め、違う話に切り替えろと文句を垂れる。
一瞬、彼女が悲しそうに見上げてきたように感じる。
本当に一瞬だったのに、時が止まったかすらに思えた。
心臓がズキッと痛む。
細い肩を掴んだ。
それは、ほぼ無意識で。
「…どんなヤツがいたって、今の一番はお前だ」
その顔を見たせいで出た言葉。
が、0.5秒後にはそれを言ったことを激しく後悔した。
「ひゅー!」
「言うー!!」
「もう許す!ここでちゅーしろ!!」
「し、しねーよ!!バーカ!!」
照れ臭くてアイツがどんな顔をしたかは見えなかった。
見ないようにしていた自分もどこかにいたのかもしれない。