第55章 【番外編】 パティエンス
毎年恒例のミニ合宿の事前準備で高校に来ていた。
まだピヨピヨだった1年生が、立派に3年生になっていて、部外者の私ですら感動を覚える。
先生に何を積むのか聞いて、車庫まで運ぶ作業を少し手伝った。
今年もバーベキューするんですよー!と嬉しそうに言ってて、いい先生だと改めて思った。
「今年もいらっしゃると助かります、まだまだマネージャーが足りてないので」
「一応行くつもりではいますよ、暇ですし」
「るるさんのご飯は美味しいですから、皆ヤル気出るんですよ」
レシピ通りの物を作っているだけなんだけど、ちょっと嬉しく思った。
水呑場で、ついでにドリンクを作っていると休憩の子たちがお喋りをしながら来ていた。
「今日コーチ元気ねえなー」
「腰、さすってたぜ」
「…ってことは…!いいなー!」
男の子だなぁ、と笑いを堪えてこっそり話を聞いてしまった。
私の存在には気づいてないようだ。
「前の打ち上げで酔っぱらってた時、彼女の性欲がエグいって話してたぜ…」
(えぐい……!?)
「そんなツラいもんなんかな?」
「ばっか!おまえ、カロリー消費量調べてみろ!
長距離走るレベルだかんな!?」
「美人でも積極的すぎんのはなあ……」
(……うわー)
そんな話を聞いてしまっては、私もなんとも言えない。
合宿もあるし、頑張ってもらいたいし、支えられるようにしなきゃ!
よし、とドリンクを持ち上げ、なるべくお誘いをしないよう心に誓った。