第51章 【番外編】火傷
「繋心さん、お鍋に具を移すので持ってきてください」
「あ?これか?」
コンロから外れてる土鍋は冷たい。
と思っていた。
「あ、ミトン…」
「あっっっつ!!!」
そういう訳ではなかったようだ。
「全治2週間ですね」
両手の指3本と掌少し、赤く腫れた火傷が出来た。
ぐるぐるに包帯を巻かれたが、あまり物に触れないように医者から注意された。
「ごめんなさいっ!!」
隣で何度も謝るるる。
「…や、俺の不注意だ…」
「ほんと、ごめんなさいっ!!」
「もういいって…」
やれやれと息をつくと、るるは薬を受け取ってくれた。
「参ったな…ケースは…持てないな…」
「繋心さん!私が代わりに…」
「させられるかよ!と言いたいがこればっかりはな…」
「……精一杯、がんばりますね」
首を傾げ、笑顔で言う。
自然と語尾にハートが付いているように聞こえてくる。
我慢して続けることも出来たが、ずるむけて治りが遅くなるよりかは、新しい皮膚になるまで手伝って貰ったほうがいいだろう。
「それより飯にしようぜ」
「そうでした!」
病院にいってる間、放置されてた料理を温め直す。
(そういやるるの背中も火傷だったよな…)
まともな治療を受けず、すぐに新たに付けられるそれはさぞ痛かっただろう。
未だにじんじんと痛む両手を見ては、そのツラさのまま生活していたコイツに感心する。
「どうぞ」
と綺麗に盛られた飯を眺め、るるは、いただきます、と両手を合わせて食べ始めた。
「るるさん…俺は?」
別に持てなくはない食器を眺めて、ちょっとだけ期待してみる。
「あ!そうですよね……はい、あーん」
「玉こんにゃく」
「えー!取っちゃったので我が儘言わないでくださいー」
「お前がそれ食え」
「…もう…」
こうして少しずつ食べさせて貰えるのは、スイカ以来だ。
やってもらった後で思うのはなんだが、恥ずかしい。
「……やっぱ自分で食う…」
「無理ですよ…今日はもう諦めてください」
「……」
優しい味がしみこんだ煮物だった。
「美味いな……」
「お粗末様です」
「ご飯」
「はいはい」
健気に世話をして貰えるのは、なかなかない。
しばらくは諦めて甘えるか…。
そう覚悟を決めた。