第47章 【番外編】白の王子と黒の騎士
「澤村くん…」
私には、少しだけ、苦手だと思う人がいる。
それが、彼だった。
「久し振り」
何がどう苦手、というものを上手く説明出来る自信はないのだが、彼は少なくとも、私に対して敵意がある。
………と思う。
「おひゃゆ…おはよう、……るるしゃん!!」
「噛みまくりじゃねえか」
後ろであわあわとしている菅原くんも声を掛けてくれる。
安心感が一気に出てくる。
今日は、市の体育館に繋心さんの試合を見に来ていた。
この前と同じ、後輩の子たちだけだと思ってたから驚いた。
「今日はOBだけ招待されたのかな?」
「や、他の奴も来るってさ」
菅原くんと話している間も、ひしひしと感じる澤村くんの視線が痛い。
心当たりを考えてみたけれど、特に答えが浮かばない。
(私、何かしちゃったのかなー…)
嫌われたと自覚があったのは、高校3年生の夏。
進路をやっと決めた私が、菅原くんに勉強を教わるようになってからだった。
彼も教える程の自信はないって笑っていたけれど、凄く上手で、しかも褒めるのも上手で、とても楽しく教えて貰えたのを覚えている。
そのくらいの時期から、じっと怖い顔で見られたりしていた。
ひしひしと感じる、敵意。
(謝りたいけど、なんのことかわからないなぁ……。
でも私も無神経だから、知らない間に傷つけちゃったのかな…?)
今日も顔を合わせれば、にこっと笑ってくれるけれど、感情のない暗い笑顔だった。
「か、っカッコいいね…!!!」
前回あまりにも繋心さんがカッコよくて、全く試合に集中出来なかった反省を活かして、自宅で散々イメージトレーニングを重ねてきたけれど。
全く効果はなかった。
結局、どっちが勝ったかすら記憶になく、日向くんときゃーきゃー言いながら会場をあとにした。
「おうちでどんな顔したらいいかわからない!」
自分でも驚くくらい、反省が活かせてなかった。
「るるさん、夏も同じこと言ってましたけど、前頭葉がお豆腐で出来てるんじゃないですか?」
「そうかもしれない…!」
月島くんにさらりと嫌みを言われるけれど、思わず納得してしまった。
からかい甲斐がないとため息をつかれてしまう始末だった。
「待たせたなー」
「繋心さん!!!」
声を掛けられて一瞬飛び上がる。
「んじゃ、行くか」
今日はそのまま、皆で忘年会だった。