第42章 アップルアンドシナモン6
「……あれ!?」
るるが起きたようで、第一声を上げる。
「繋心さん…?ホンモノ?」
昨日激しく抱いたのが、どこか気まずい。
「おはよ…」
「繋心さん…!!」
真っ白な肌が覆い被さってくる。
涙を流しながらるるが必死に抱きついて、頬を寄せてくる。
子犬に絡まれてるようだ。
「はいはい…」
「会いたかったです…」
「会いに来てやった」
「大好き…」
「知ってる」
「いつもより、優しい…」
「おんなじ」
るるは気まずそうに見上げてからゆっくりと起きる。
色々思い出したようで、まばたきを何回かすると、
「ごめんなさい…」
と謝ってきた。
「怖い思いしたんだろ、気にすんな」
「怖かった…」
復唱するように言うと、ゆっくりとまた抱きついてきた。
「繋心さん…いつ、帰るんですか?」
「…今日の夕方のつもりだ」
「あとちょっとしかいられない…」
耳元で悲しそうに、ぐすぐすというのが聞こえる。
そう言われれば、と時計を確認した。
るるはばっと布団を剥ぐと、俺自身に手を這わせ始めた。
「るるさん?」
「えっち、したいです」
「るるさん、俺、一晩中してた…」
「やだ!私は覚えてないですもの!!」
「すごく良さそうにして……」
「覚えてないものっ!!」
覆い被さってくる小さな身体は、立派な肉食動物だった。
駅まで見送りに来てくれたるると木兎は、弁当やら飲み物を押し付けてきた。
るるが今にも泣きそうな顔をする。
「帰ってから毎日可愛がってやるから…」
頭を撫でると、ぎゅっときつく抱き締められる。
人前だというのに、そのまま濃厚なキスもおまけでされる。
羞恥心もあったが、可愛い甘えにあきらめて答えてやった。
「俺もいるんだけどー!」
という悲しい突っ込みがホームに響く。
悲しき恋人とのお別れも2回目。
あと1ヶ月、無事に耐えてほしい。