第42章 アップルアンドシナモン6
どうにも電話やメールというものは苦手だ。
確かに、毎日声は聞きたい。
だが、何を話したらいいかわからないし、特に報告することもこっちにはない。
素っ気ない電話でもいいかと思ったが、るるは少し寂しそうにする。
観光名所に行ってきた、と報告の写真という写真に全部同じ男が写っている。
何度か世話になった学校の主将だったか。
声も身体もでかくてよく動く奴だった。
そいつとの前の1件もあり、不安が脳内をよぎる。
アイツは、無自覚で、無意識だ。
相手の男がデレデレとしているのに全く気付いている様子がない。
前回は俺が悪かった。
タイミングも運もなかった。
や、そんな言い訳しても無駄だ。
1本ヤニを吸い終わると、少し黄ばんだ壁紙を見つめる。
俺とすら、あんなに楽しそうに写真を撮ってくれてただろうか。
ため息が出る。
結局、あんだけ毎晩愛し合っていても、こっちの一方通行かもしれない。
そう、ふと思うときがある。
掃除をサボった部屋を見渡し、何日か実家に居座るか、と荷物を整理した。
相変わらず楽しそうに飯の写真が届く。
なんとかランドとやらに今日は行っているらしい。
よく見るキャラクターの前で写る二人。
その写真にムカついて思わず返信をする。
『腕を組むのはやめろ』