第41章 アップルアンドシナモン5
楽しげな音楽が流れる。
噂の夢となんとかの国に初めて来た。
初めてもなにも、遠出が初めてなので当たり前だ。
1日自由行動となり、特に理由もなく、木兎さんと一緒になった。
ここ数日、忙しかったようで、素っ気ないやり取りしかしてもらえてない。
試しにベタベタしてる写真を送ろうと提案してくれたのは、木兎さんだった。
「ほら!返事きたろ!?」
「すごーい!!」
しかも少し嫉妬しているような内容だった。
「嬉しい…」
携帯をにぎりしめて、アプリの画面を改めて眺める。
『繋心さん、好きです』
と短く打つ。
『知ってる』
といつもの返事。
また短く通知が来る。
『他の野郎と仲良くすんな』
「……っ!!好きっ!!」
「わかったわかった!!」
バシバシと背中を叩かれて笑われる。
「るるは絶叫平気か!?」
「乗ったことないかも!」
「あれがメインだ!」
岩山を走り抜ける機関車のアトラクション、大人気らしく、すごい人数が並んでいる。
「すごーい!」
今日は空いている方、とは聞いたけれど、並んだ人数はきっと、学校の全校生徒くらいいるだろうと驚いた。
待ち時間は長かったけど、終始色んな話をしてくれる木兎さんが飽きさせなくてあっという間だった。
こういう時、繋心さんは割りと黙ってしまう方かもしれない。
それでもきっと、最大限楽しませようとしてくれる姿を想像して、頬が少し緩んだ。
「安全バーを下ろしてください」
「あ、安全なんですよね?」
「安全だから走ってるんだ!」
なるほど!と相づちを打ち、カタカタと線路を走る機関車に揺られる。
坂をゆったりと上っていくと、景色が一望出来た。
そして、ふわっとした浮遊感と共に落ちていく。
叫ぶに叫べず、ひやぁっ!と変な悲鳴が出て走っていく。
隣の木兎さんは大笑いしていてとても楽しそうだった。
「す、すごい…」
自分の語彙力の限界を感じた。
人生初の絶叫ものはこれで終わった。
他の、滝下りと宇宙のも連れていって貰ったが、なかなかどうしても慣れず、終わる頃にはぐったりだった。
「振り回してすまん!」
「だ、大丈夫…」
ふふっと笑うと飲み物を差し出してくれる。
解散時間は自由だったので、お土産を買って、外のショッピングモールのレストランでご飯をして、私たちは帰路についた。