第38章 【番外編】言わないと伝わらないこともあります
「で、お前らは一緒にいたと」
「はい!」
「もー、そこまで怒ることないじゃないですかー」
「怒ってねえよ!!
ほれ、行くぞ」
ぶーっと怒りながらも車に乗り込むるるさんを見送る。
「るるさん、1日ありがとう」
「こちらこそ!」
「じゃあな」
あんなあからさまな嫉妬をしてくる恩師に笑いが堪えきれず、最後は終始笑ってしまった。
「そうだ」
るるさんが可哀想だったので、スマホを取り出して連絡を一つ入れる。
少しでも喜ぶ姿が見たかった。
そして出来れば、俺からの言葉で喜んで欲しかった。
「ったく、今度はメッセかよ」
信号待ちにふと携帯が震える。
独特のリズムですぐにわかり、開いて見る。
「………」
細かいお気遣いありがとうございます。
わざとらしく脳内でお礼を言う。
「……なあ」
「はい?」
「……」
照れ臭くなって、つい視線を反らす。
信号が変わったのを見て、アクセルを踏む。
「どうしました?」
「……」
無邪気に聞いてくるのがまたテレる。
自分にイライラして、やっと覚悟が決まった。
「その服、この前一緒に買いにいったろ」
「…っ!」
「あのよ、悩んでたもう1着より、断然可愛いし、好きだ…」
「…ぁ…」
るるが黙った。
あれ?違ったか?
と不安になってきて、ちらっと横目で見る。
顔を赤くして、目をキラキラと嬉しそうに耀かせ、頬が緩まないよう固く唇をきゅっと絞めている姿があった。
「……覚えててくれたんですね…っ!
どうしよ、すっごい、…すっごい、嬉しい……」
そんなに可愛い姿で喜んで貰えるとは思わず、若干動揺をする。
「……ったりめーだろ」
なんとか返事したが、脳内に焼き付いたその可愛い姿が離れない。
「繋心さん…大好きです…っ!」
「!!!」
その顔とその声で、ずるい。
裾を引かれ、ちゅっと小さくキスされる。
今日も熱帯夜になりそうだ。