第4章 お兄様と炊飯器
「烏養さん、ここ最近機嫌いいですよね?」
「あ?んなんじゃねえよ…」
「何かいいことあったんすか!?」
「…だからんなんじゃねえって」
いいことなんてもんじゃない。
ここ数日は家に着けばベッタリくっついて過ごしている。
顔が緩んでしまうのを引き締めるのも一苦労だ。
いよいよ明日の夜、親の旅行が終わる。
言い訳も何もない。
結婚しろしろとうるさい生活ともやっとオサラバだ。
そして週末、やっと手に入れた練習試合のない日曜。
るると初めてのデートの約束をした。
ぐっと握り拳を作り、一人静かにガッツポーズをする。
「うし!お前ら!今からランニングすっぞ!!」
「へ?」
「は?」
「日曜に練習試合がないなんて久々だろ?
その日に筋肉休めんだ!今日走んなくていつ走る?
行くぞ!!」
「最近コーチ情緒不安定なんじゃない?」
月島のさらっとした嫌味が静かに俺の耳に刺さった。