第26章 【番外編】一つの恋の終わり
「そこにいたのか」
「開けてくださーい」
漸く気付いてくれた烏養さんが戸を開けてくれた。
「すみません。俺がうっかり閉めちゃって」
「皆一回はやってるからな。
今度から気を付けろ」
ぶっきらぼうに言われ、気まずくのそのそと倉庫を出た。
相変わらず、睨まれている。
視線が痛すぎて逃げるように中庭に戻った。
(怪しまれてる、のか?)
るるさんの服の埃を払うふりをして、入念にチェックしてるところが伺えた。
当の本人は何もわかってないようだった。
「どうしました?」
「虫が付いてないか見てんだ」
イライラしながら彼女の周りをぐるぐるしている烏養さんを見て、敵わないな、と思って笑いが出る。
(あんな顔、するんだ…)
二人を見ていると、凄く幸せなのが伝わった。
切なくも甘い、一つの恋が終わった。
後で大地に報告しておこう。
なんとなく、そう思った。
帰り際、商店まで送ってくれた烏養さんが、るるさんに聞こえないように、
「アイツの特技、すげえよかっただろ」
って一言言ってきた。
目は笑ってなかった。
「次はねえからな、覚悟しとけ」
「菅原くん、またね」
最後に見えた笑顔が唯一の救いだった。
「あー、次会うのつらっ」
肌寒い風が、今の気持ちと同じだった。