第26章 【番外編】一つの恋の終わり
るるさんは、進路にとても悩んでて、何回も一緒に探したのを思い出す。
普段はしっかりしてそうなのに、たまにぼんやりしてて、考え事を真剣にしてると唇を尖らせる癖があって、数時間しか一緒にいなかったはずなのに、俺はすっかり惹かれていた。
勿論、本人にも烏養さんにも内緒なんだが。
どこにするか決めて、学科の特色や論文の書き方や、書類選考の基準、結構細かく見てあげた。
あってはならないが、そこに下心は少しあった。
隣で悩みながらふんわりさせる香り。
時折色香と煙のにおいを漂わせる。
いつもそんな、下心ある気持ちで誘うのに、帰る頃には一緒にいる時間が幸せで、そんなことどうでもよくなってた。
卒業式の日、大地に
「告白するくらいは只だろ?」
と背中を押された。
が、そんな勇気もなく、ただ、赤面して俯いてしまった。
「菅原くんには、すごいお世話になっちゃったなぁ」
いつものように首を傾げて、にっこりと笑う。
「いや、手助けできて、よか…」
ぎゅっと両手を、彼女の冷たい白い手が握ってくる。
「っ…!」
「本当にありがとう。
お礼がしたいんだけど、何か、あるかな?」
君がほしい、が出かかって慌てて飲み込む。
しかもそんな卑猥な意味でなく、普通のお付き合いとして。
まあ、無理なんだけど。
「あ、えっと、お互い様だから!
気にしなくていいよ」
濁してそう返す。
声が若干上ずってた。
「……そう」
残念そうに言うと、彼女はまた、ふっと笑う。
「また会った時に欲しい物あげる!ね?」
それは、また会っていいってこと?
と期待にドキドキしてしまう。
優しい花の香りの思い出。