第25章 【番外編】合宿と長い夜
襖のしてある和室の大部屋。
そっと布団に横たわらせ、小声でいつもの癖で他愛もない話をし、ふと携帯を見る。
「3時か…朝お前起こせよ」
「無理ですよ…」
「誰が朝飯つくんだ?」
「ううっ、繋心さん絶対起こしてくださいね?
5時ですよ…」
「7時まで寝てないのか?出発遅いから間に合うぞ」
「だって、シャワーしないと…。
べたべたですよ?誰かさんのせー」
「わるかった、おこします」
最後まで言わせないように口を抑えて止めた。
もう寝ろ、と無理やり寝かし、俺も睡魔に耐えきれずにそのまま寝た。
翌朝、なんとかこなしてガキどもをワゴンに乗せる。
なんとも言いがたい気まずい沈黙が流れた。
疲れ、とも違う。
隣に座ってる澤村がむすっとしてるのが気になる。
「おい、なんかあったのか?」
と小声で聞いた。
「お二人が一番わかってんじゃないですか?」
懐かしい腹黒い笑みを向けてきた。
ヤバい。
話をそらさないといけない。
「るる、楽しかったか?」
と聞くと顔を赤くして、
「はい、とっても…」
と意味深に言われ(そんなつもりないだろうが)、ますます空気が悪くなった。
(ヤバい)
脳内で復唱した。
ドア横の菅原は目すら合わせてくれない。
無言の車内で高速をひたすら走る地獄は、後にも先にもなかった。