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迷い道クレシェンド【HQ】【裏】

第24章 【番外編】けがれなきくうかん


おじさまのお陰で、安い家具は買いそろえられた。
学校のすぐ近くで、買い物するにも便利な場所だった。
「部活あると遅くなるから、鍵、ちゃんと閉めろよ」
「だいじょーぶです」
帰宅して、着なれないスーツを脱ぐ。
繋心さんのスーツ姿は、いつもと違って凄く色気があった。
「写真、撮っていいですか?」
「はあ?」
「カッコいいから…」
携帯を向けると、取り上げられた。
「やめろ」
「えー?レアだし、1枚だけ…」
手をそのまま引かれ、お布団の上に抱きしめられたままダイブする。
「わっ」
むすっとした、真面目な顔の繋心さんと目が合う。
「本物じゃダメかよ」
「……ホンモノが、一番です」
顔を思わず埋める。
「あ、ワイシャツに化粧品が…」
「いいって…」
重たいコロンの匂いが煽ってくる。
「繋心さん……ここなら、毎日デキますよ…?」
「オッサンはそんなに元気じゃねえぞ?」
「…今は?」
「聞くんじゃねえよ」
低く掠れた声で囁かれる。
それだけで、お腹の奥が熱くなる。
「…んっ」
背中のファスナーを下ろされて、手が入ってくる。
「まだ、治ってない…」
「いいんだ、大人しく触らせろ」
大きくてゴツゴツした手のひらは、労るように背中を撫でてくる。
「ほら、コッチ」
顎を捕まれて強制的に唇を奪われる。
頭の奥がチリチリと音がなる。
痺れるような感覚に陥ると、つい鼻に掛かったような声が出てしまう。
「煽んなって」
「そんな、こと…んっ」
パリッとした新しいシャツに身体が沈む。
新居独特の消毒のにおいと干した木の香り。
身体が反転してやわらかな布に包まれる。
覆い被さってくる愛しい影。
新しい空気を穢していくのに、ふと、罪悪感が沸く。
「繋心さん…」
「ここでやめろっつっても」
「違います」
「あ?」
「壁紙汚れるから、ベランダで吸ってくださいね?」
「…萎えた。終わりだ」
「や、やだ!うそうそ、いいですっ」
繋心さんは悪戯みたいな笑顔を浮かべると、私の首筋に噛みつく。
「はっ…ぁ…!」
溶かされていく思考の中、きっと、茶色くなっていくであろう真っ白な壁紙を見つめていた。
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