第24章 【番外編】けがれなきくうかん
志望校に受かって、やっと私はおじさまとおばさまに連絡が出来た。
携帯を持つ手は震えていた。
「あの、頭、そんなに良くないし、ちょっと遠いけど、大学に行きます…!」
声もきっと震えていた。
「おめでとう」
そう言って貰えた時は思わず泣いてしまった。
「お金、少し残りました。
返したいです」
「大事に使いなさい」
「そうよ、うちの子同然なんだから!
気にしないで!」
「そ、そんな…!」
返したら怒る、と言われ、呆気なく電話は終わった。
入学式も、徹さんのところとは日にちがずれてるからと来てくれた。
久々に会ったおばさまは痩せてしまって、心配かけたことをかなり後悔した。
「彼氏と同棲してるんですって!?
もう、心配かけて、もうっ!
安心しちゃったわよー」
「ごめんなさい…!」
「すっかり丸くなっちゃって!」
「ふ、太りました…?わたし…」
「違うわよ!!中身よ」
いいヒトなのね!と嬉しそうに言うと、スーツ姿の繋心さんが後ろで気まずそうに咳払いをした。
お互い辿々しい挨拶をすると、緊張している繋心さんが固い動きで
「席、取っておきマシタ。コチラヘドーゾ」
と二人を案内してくれた。
大学の入学式は、あまりそれっぽくなく、来ている親も少なかった。
お昼をご馳走してもらい、私たちは解散した。
おばさまは繋心さんを気に入ったみたいで、
「次に会うときは孫ね」
と嬉しそうに呟いていた。
「あー……きんちょーした…」
がっくりと肩を落とし、繋心さんが吐くように言う。
「帰りましょっか」
春風が舞う。
暖かい日差しの香り。
今日から新居だ。