第20章 甘い水
20時を過ぎてもるるが帰ってこない。
補習にしても遅すぎると電話を入れたが出ない。
また及川に拐われたか?なんて嫌な考えが浮かんだが、その線はこの前の感じだとなさそうだ。
「ちょっと見に行ってくるわー」
と適当に言い、愛車に乗り込んで向かった。
案の定、学校には見回りのオッチャンがいて、
「君ー!なんのようだね!?」
と定番な台詞を吐いた。
「…ぁー…、『妹』が帰ってこねえんだわ。
誰もいなかったか?」
「当たり前だろ、何時だと思ってるんだ?」
「そーっすよね…俺もそう思って来たんすけど…」
運よく顔見知りでない警備員なのをいいことに適当な嘘をつく。
テスト前のせいか、教師も帰っているようだ。
職員室も真っ暗に電気が消えている。
ヤバイな…と、背中に暑さ以外の汗が流れる。
警戒心が高いくせに、ソッチに関しては慣れすぎてるせいでアイツは危機感が薄い。
慌ててまた電話をするが出ない。
「クッソ……」
学校に遅くまでいそうだった部のメンバーにメールを投げることにした。
端的で明確な文をさくっと送信した。
『るるがどこにもいない』
『え?ほんとですか?』
『見てないです!』
『おれも見てないです!』
続々と返事が来るが、有力な情報がない。
3年ですら見かけてないと言うのでは仕方ないと、アプリを閉じようとしたところで、ソイツ本人のように冷めたアイコンの表示がされる。
『てか、そんだけ過保護なら、彼女のGPSを契約してないとかありえなくない?』
「あ!!」
『コーチ、僕のお陰で思い出せましたね。
アイス一週間で』
あとの一文は読まなかったことにするとして、急いでGPSを検索する。
地図が表示されると、駅方面のマンションに印が着いた。
車に飛び乗り、そのまま走った。