第19章 ほしゅうじゅぎょう
「今日も委員会変わってくれない?」
クラスの女の子が聞いてくる。
名前は……また忘れた。
「あ、ごめんなさい、私今日森井先生に呼び出しされてて…」
女の子の雑用はなるべく引き受けている。
私の性格は、多分、女子を敵に回しやすい。
それは長年の勘でとてもよくわかっている。
陰口も悪口もなるべく言ってくれて構わないが、大人数で攻撃をされるとこちらも敵わない。
それを避けるための唯一の守りの仕方だった。
今回も引き受けたかったが、そういうことになる。
「はあ?いつもやってんでしょ?
なんで今日ダメなのよ」
「アンタ、彼氏泥棒で有名でしょ。
それ以上立場なくしたいわけ?」
(か、彼氏泥棒…!?)
あまりの言われように一瞬戸惑う。
(誰と誰が付き合ってるとか把握しきれてないし…!)
「その上森井ちゃんにまで目かけられてんの?」
「いいよねーモテる子はー」
「…も、森井先生って、人気なの…?」
正直そんななら代わって貰いたい程だ。
私は帰りたくて仕方ないというのに…。
「は?授業面白いし、若いし」
「かっこいいよねえ!
黒板に字書いてるとき、きゅんとしちゃう!」
「わかるー!背も高いし!」
「昔ラグビーやってたんだってー!」
「きゃー!かっこいい!!」
(どこが?)
という言葉が出かけてなんとか踏みとどめた。
ルックスは確かに、イイ。
なんとも苦手な性格なのが惜しい。
「ふん、まあ兎に角、委員会はよろしくね!?」
「それでさー…」
「ま、待って…!かわ、代われない……」
あー、行ってしまった……。
「彼氏泥棒…!!
今年も女の子の友達は諦めるしかないなー…」
泣く泣く彼女たちの言葉を噛み締めて、私は職員室へ向かった。
清水さんとも結局仲良くなれていない。
あの日に、不潔、と繋心さんに言った日から怖くて話せていない。
3年に上がって何回か私の雑用を手伝ってくれたから、名前は覚えている。
凄く綺麗でいい子で、完全に私の片想いで終わっている。
中学は、徹さんの家に住んでいるというだけで、とんでもなく孤立した。
編入したからだと信じて止まなかったが、後から散々な言われようだった。
恐らく同じ中学だった人達がなにかを言いふらしているのだろう。
もしかしたら事実かもしれないし、反論するつもりもない。
「一人でもいいやって思ってたけど、女の子とお出掛けとか憧れるなぁ……」