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まったりの向こう側

第2章 Please give me...


『うんっ!んぐ…!』


布団越しに、えづくような、唸るような声が聞こえた。


「ナナバ!」


エルヴィンは勢いよく布団をはぐ。


見ないよ

そう自分から約束したのだが、そんなことに構っている場合ではない。


ようやく目にした布団の向こう側…
そこには、ぺたりと座り込み片手で口元を覆う彼女の姿。


「ナナバ、出せ…!」


そう叫んだエルヴィンへとあいた手を伸ばし、そっと口元へ添える。


静かに

そうナナバが視線で伝えれば、エルヴィンも引かざるをえない。


「っ、ん…」


だがナナバは吐き出すことはせず、かといって他に何をするわけでもなく、ただ口元をおさえているだけ。


「…だめだ。ほら、ここに…」


控え目な声と、差し出された大きな手。


ナナバはその手を横目に、軽く顎をあげる。


「ん」


ごく、という音と共に、エルヴィンの真っ白な熱がナナバの奥深くへと流れていく。


「……っ、はぁ…」

「何を?!」

「しっ。声大きい…、もう」


案外忘れっぽい?

そう茶化すように言われるが、当のエルヴィンはそれどころではない。


「何をするんだ…!そんなもの、飲まなくていい!」


「……エルヴィンの、味」


「!!」


「少し待ってて」


驚き固まるエルヴィンをベッドに残し、暗闇の中ナナバはクローゼットを明け閉めしている。


「…あった」
「これ、勝手に選んだけど大丈夫?」


そう言いながら振り返った彼女が抱えていたのは、パジャマと下着。


「あ、あぁ、ありがとう」

「着替えたら休んで。少しだけでもいいから」

「……」

「…エルヴィン?」


受け取った着替えを膝上におき、またもそのままで固まっているエルヴィン。


可愛らしく、くす、と笑う声が聞こえた。


「…見えてる」

「?!」

「なんて。ウソ。ほら、着替えて?」




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