第13章 たまにはいいでしょ?
「これはね、フルーツサンド。
こっちは卵焼き挟んでみたんだけど」
「美味しそうだね。
早速いただいても?」
「どうぞ」
シャワーを浴びてから、少し遅めの昼食。
バスケットの中にはやはり二人分の食事が用意されていた。色とりどりのサンドイッチにミートボール。サラダもある。水筒には紅茶。完璧だ。
「ん、美味しい」
「ほんと?良かった」
それじゃ、私も。といって同じ具材のサンドイッチを頬張る。可愛らしく膨らむ頬。両手で持つサンドイッチの角は一口分が小さく欠けている。
「ナナバ」
「ん?」
こくりとのみ込み、なぁに?と少し甘えたような声。いや、もしかしたらこれは…俺を甘やかす声かもしれない。だってそうだろ?寝ている俺を気遣って起こさなかった。寝すぎて時間がなくなり遠乗りに行かれなくなっても責めなかった。きっと時計も、時間を知れば謝る俺を気にしての事。それから…どんなに激しくしても、全部受け止めてくれた。最後まで君自身で。中で。
それにこの、用意してくれた食事だ。俺の好きなものばかり。思わず『ちゃんと君の好きなものをいれたかい?』と聞きたくなる程。
間違いない。
これは、甘やかされている。
「ナナバ、結婚しよう」
「へっ?」
「結婚しよう」
「え、いや、待って。
いきなりどうしたの?え、けっ?」
「結婚しよう」
もう、この一言しか出てこない。
恋人としてナナバは誰よりも特別な存在だ。それだけで満足だと、そう思っていた。いや、そう思い込もうと自分に言い聞かせていたのかもしれない。好きだけど、好きだからこそ、縛りたくなかった。
でも今日こうして甘やかされてわかった。俺は欲張りで我が儘なのだと。
恋人よりももっと特別な、確約された証がほしい。君にずっと側にいてほしい。これから先ずっと。
「あの…」
「結婚しよう。
……嫌?」
「………嫌、じゃないです」
真っ赤な顔で俯き、嬉しい、と小さく小さく呟いた君。
「有り難う。
これからもよろしく、俺の奥さん」
お礼にキスを一つ。
柔らかい頬。
もうこれからはずっと俺のもの。俺だけの君になってくれたんだね。
有り難う、本当にありがとう。
寝坊もたまには悪くないな。
あ、でも次はちゃんと起きるよ。
新婚旅行だからね?
End