第6章 君の気持ち
「ねえ、不二くん」
「ん?」
「いつだったか、私の笑顔がみたいから、私に優しくしてくれるんだって、言ってたことあったよね」
「え......、うん」
突然の問いに驚いたが、彼女が言っているのは彼女が風邪を引いた時のことだろう。
その言葉に、偽りはない。
「あれ、嬉しかったんだ。私はずっと、楽しんじゃいけない、笑っちゃいけないって思ってたから。...私の笑顔を、必要としてくれる人がいるんだって、そう思えた」
「優衣ちゃん...」
「その時から、不二くんは私の王子様だった。幼稚な言葉かも知れないけど、私は君に救われたんだ」
「え...」
王子様って...
ボクは、君の支えになれていたのか。
「だから、私も不二くんに笑っていて欲しい。私も、君の笑顔が見たい。...辛いことを、抱えて欲しくない」
「っ...」
観察眼の鋭い彼女のことだ。ボクが悩んでいること自体は分からなくても、何かに悩んでる、ということは分かるのだろう。
それが、君に関係することだってことは知らないで。
「はあ、君は目敏いなあ」
「まあ、それが私の特技だから」
「そういう所は鋭いのに、本当に...鈍感だね」
「え、鈍感?」
そうかなぁ...と君は言うけど、僕から言わせればやっぱり君は鈍感だ。
こんなにボクが心から好きって言っているのに、気付いてくれないんだから。
ちょっとやそっとのからかいみたいなアピールじゃ、全然分かってくれやしない。