第5章 嫉妬
「不二くん!!!」
「っえ」
この声、優衣ちゃん?
ボクは聞こえた方向に顔を向けた。
「不二くん、まだ聞こえてる?」
「...うん、聞こえてるよ、優衣ちゃん」
君の声がボクを呼ぶだけで、少し安心する。
「とにかく、難しいかもしれないけど1回落ち着いて、私の声を聞いて。1ゲームくらい、落としたって大丈夫だよ」
「...うん、分かった」
そうだ、パニックになる方がまずい。
イップスにかかる前は分かっていたのに、実際にかかるとそうも言ってられないな...
「とりあえず、1回深呼吸して、楽しいこととか嬉しいこと考えてみて?」
「え?」
「大丈夫、私を信じて」
楽しいこととか嬉しいこと?
そうだな...
今1番、見たいものは、
『不二くん!!』
君の心からの笑顔、だったりする。
ボクの名前を呼んで、隣で笑ってくれたら、どんなに嬉しいことだろう。
ボクは、どんどん我儘になっていたみたいだ。