第4章 花
「まあ今日は敵同士ってことで頼むよ」
「はい!よろしくお願いします!」
「ふふ、俺が勝ったらその敬語、やめてくれる?」
「え?あ、はい...いいですけど...」
「うん、じゃあ、よろしくね」
そうして彼は、立海の部員の元へ戻って行った。
それでも心が穏やかにならなかったボクは、彼女の手をとって青学の皆が集まる方へ向かった。
「え、ふ、不二くん...?」
「...少しだけ、我慢して?」
今はどうしてもこの手を離したくない。
周りに見られてるだとか、ボクの気持ちがバレるんじゃないかとか、そんなことを気にかける余裕すらなかった。
離したら、君はどこかへ行ってしまうような、そんな気がしたから。
ボクはいつの間に、こんなに黒くて醜いモノを心に飼っていたのだろうか。
それでも、君がこうすることで顔を赤らめてくれるから。
だから、どうしても期待してしまう。
この醜い気持ちを君にぶつけてしまう程の恋を、ボクは諦めなくてもいいんじゃないかって。