第3章 後編
暗い森の中。
月夜の明かりが照らしている中で、ユーリはただ茫然と歩いていた。
あの後、無意識に歩いていたせいか、今自分がどこにいるか分からない。
だが上の空のユーリには関係なかった。
ふらふらとただひたすら、森の中を彷徨っていた。
本当は行く宛ても、これから先のことも考えなければいけない。
だけど彼女はぽっかりと心に穴が開いたように、虚ろな表情をしていた。
そして歩き続けることどれくらいたっただろうか、見たことのない礼拝堂を見つけた。
闇雲に歩き続けてたおかげで疲れたユーリは、その礼拝堂で休むことにした。
朝日が昇るまで、まだ時間はある。
ユーリは礼拝堂の中に入ると、だいぶ錆びれておりボロボロだった。
取り合えず座れそうなイスを見つけると、そこに腰を掛ける。
……この祭壇は、何を祭っているのだろう。
ユーリはぼんやりと、視線の先にある祭壇を見ていた。
ローと一緒に回った礼拝堂は四代元素であるが、他にもいろんな種類の礼拝堂があるのだろうか。
……まぁ、今の私にはもう関係ないか。
ユーリは自称気味に笑うと、そっと瞳を閉じた。
脳裏に浮かぶのは、ローと過ごした日々。
先ほど王女が通り過ぎた時に見えた手の魔法陣には、すでに4つの光が宿っていた。
どうやらユーリのがそのまま引き継がれたのだろう。
2度手間にならなかったのは良かったが、それはローが長い眠りにつく日が近いことを示している。
私は一体彼に、何が出来たのだろうか。
ユーリは過去の記憶を辿るが、思い出せば思い出すほど、迷惑しかかけていない気がした。
ユーリはそっとため息を吐く。
ローには出来るだけ、眠りにつく前にやりたいことをして欲しかった。
だけど彼は欲があまりないのか、ほとんど本を読むか、食べるか、それくらいしかなかった。
ユーリからすれば、ローに対して何も出来なかったと思っているが、ローはそう思っていない。
だがそれは、ユーリに伝えることなく終わりを迎えた。
ユーリは暫く考え込んでいたが、これ以上考えても仕方ないと思い、いい加減気持ちを切り替えることにした。