第1章 前編
伝説の英霊が現れて騒然とする儀式の間。
ユーリも唖然とした様子で立ち尽くしていたのだが、教師に呼ばれて一度その場を離れることになった。
他の生徒達も、教室へ戻されているようだった。
ユーリは教師達に別の部屋へ連れていかれると、色々な話をされた。
急なことであまり話が頭に入ってこなかったが、要約すれば闇の魔物がその内現れるから、それに備えて強くなれということだった。
本当はもっと具体的に色々話をされたのだが、そんな一気に頭に入ってこなかった。
辛うじて心に留まったのは、英霊とのシンクロについての話だ。
要は英霊と仲良くしろという、何とも簡単に捉えてしまったが果たしてそれでいいのだろうか。
ユーリは今後のことを考えてため息を吐いた。
どう足掻いてもあの英霊と仲良くできる気配がない。
今後は実践を交えて訓練を行っていくのだろうが、一体どうなるんだ。
取り合えず彼を呼んで戦って貰うのか?
英霊と呼ばれるくらいだから、そんな訓練必要ないと一蹴されそうだが。
それに、英霊だろうが杖に辿っている普通の魂だろうが、主の魔力の大きさはある程度重要らしい。
ちょっと待て。私の魔力はほぼ0だけどこれは大丈夫なのか?
英霊も主の魔力を必要とすると聞いたが、生憎私の魔力は皆無だ。
そのことを彼は知っているのだろうか。
もし知らなかったら、違う主に変えると言って斬られるのだろうか。
将来切り刻まれている自分自身を想像して、ユーリは軽く青ざめた。
そして問題が山積みになっている状態で、取り合えずユーリは教師達から解放された。
まだ話し合うべき点は幾つもあるだろうが、今日はこれ以上頭がついていかない。
ユーリは今後のことを思い悩みながら、重い足取りで教室へ戻っていったのだった。