第1章 前編
ユーリが教室へ戻ると、他の生徒達から色んな視線を向けられた。
その気まずい空気の中、何とか自分の席に着くと数人の生徒が近寄ってきて何やら色々言われた。
下層貧民の癖になんでお前が選ばれるんだとか
あのイケメン気に入ったから私のと交換してよとか
どうせお前は英雄になれずに死ぬんだとか
ユーリはため息を吐きながら好き勝手に言ってくる生徒たちの話を適当に聞き流していると、先生が教室へ入ってきて今日の授業は終わった。
窓から外を見ると夕日が漏れているのが目に入り、ユーリはそそくさと自分に与えられた寮に戻っていった。
まだ生徒達が何か言っていたが、華麗にスルーしてやった。
「…はぁ」
ユーリは部屋に戻ると、ベットに倒れ込んだ。
取り合えず刀はベットの近くに立てかけて置いたが、この先が色々思いやられる。
そもそも闇の魔物って何だ。
どうやって戦えばいいのか全く分からない。
というか誰か変わってくれるなら是非とも変わって欲しかった。
この学校には、英雄になりたがっている人が山ほどいるだろうから。
闇の魔物を倒した人は英雄として祭られる。それは昔からそうだった。
現にこの学校にも過去5人の英雄が、石像として祭られている。
彼らがどんな最後を迎えたのかは謎だが、ここにいる生徒は英雄と呼ばれている彼らに憧れているものが多い。
私はどうでもいいのだが。
ユーリは刀へと視線を向けた。
…彼に聞いてみようか。
本当は出来る限り接触は避けたいが、私じゃなくて他の人でいいなら是非ともそうして欲しかった。
そもそも何故私が選ばれたのかまるで分らない。
ユーリはベットから起き上がると、軽く深呼吸をして刀を手に取った。