第2章 中編
ローは凄まじい魔力を感じて驚いて振り返ると、そこには同じく驚いた表情のユーリが立っていた。
足元を見るとナイフを突きつけていた男が倒れ込んでいる。
相手はローの能力を知っていたのか、ROOMが届かない範囲までユーリを連れて行った。
最初はそんな男を追いかけようとしてたが、想像以上に相手が強く手こずっていた。
だから、体力は著しく消耗するがROOMの範囲を極限まで広げようとしたのだ。
その矢先に聞こえてきた悲鳴に近い叫び声。
全ては、一瞬の出来事だった。
ローは辺りを見渡すと、魔物も人間も倒れ込んでいた。
「…な、なんだ…これは…」
白髪の男は片膝をつき、騒然とした表情で仲間達を見ていた。
彼だけが唯一気を失わないでいられたのだろう。
ローはそんな男に一瞬だけ視線を向けたが、すぐにユーリの元へと向かった。
「…おい、さっきのは…」
ローは未だに唖然としているユーリへ話しかけるが、彼女もよく分からないと首を振った。
そして倒れ込んだ人達を心配していたが、気を失っただけだと分かるとホッと安堵のため息を漏らす。
「…取り合えず行くぞ」
ローとしても先ほどのものが何なのか気になるが、まずは落ち着いた場所へと移動するのが先だ。
ローはユーリを連れて礼拝堂へ入った。
そんな2人へ男は一瞬視線を送るが、特に何も言ってこなかった。
「……彼女は本当に、魔力がないのでしょうか」
2人が礼拝堂へ消えていったとき、男がポツリと呟いた。
ユーリをずっと見ていたから分かった、彼女の変化。
彼女の瞳は、赤く染まっていた。
「彼が彼女を選んだのがただの偶然なら、とんだ拾い物をしたかもしれませんね」
男はユーリへの未練がまだ残っていたのか、そっとため息を吐いたのだった。