第2章 中編
ユーリは突然始まった戦闘に目を見張った。
「は、放してください!」
ユーリはひねり揚げられた腕を外そうともがいた。
だが、すぐに首元にナイフを突きつけられると身動きが取れなくなった。
「悪いけど、大人しくしててね」
何とも軽い感じてそう言ってくる男。
ユーリの首筋から流れる一筋の、赤い血。
ふと、ローと目が合ったような気がした。
遠くからでも分かる、舌打ちの音。
ローは攻撃は交わせるが、迂闊に反撃できないでいた。
ユーリの元へ向かおうにも、彼らの戦闘能力は想像以上に強くて厄介だった。
…どいつもこいつも、ユーリばっかり狙いやがって
ローは目の前に迫ってきた敵を薙ぎ払いながら白髪の男を見た。
彼は、ただ笑みを浮かべているだけで、視線の先にローはいなかった。
彼が見ているのは、ユーリだけだ。
…あいつは、おれが見つけたんだ!!
ローは傷を負いながらも、何とかユーリの元へと近づこうとしていた。
気のせいか魔物も集まりつつあった。
…私のせいだ。
ユーリは目の前で繰り広げられる戦いに、蒼白の表情で固まっていた。
…施設の時も今も、私はただの足手まといで、ローに迷惑しかかけていない。
傷ついていくローの姿を見て、ユーリの頬に一筋の涙が伝った。
…止めて
ユーリはただ涙を流してた。
ドクン
不意に、何かが大きく脈打った。
「…これ以上、ローを傷つけないで!!!」
ユーリが放った言葉。
その言葉は大きな衝撃波となり、辺りを包み込んだ。
地が割れるかのような地響きに、周りの者は騒然とする。
ふと、ナイフを突きつけていた男が倒れ込んだ。