第2章 中編
水の礼拝堂から1週間後、ユーリから次の礼拝堂へ行こうと提案された。
「あまり時間は残されてないんですよね?急いだほうがいいんじゃないんですか?」
そう言ったユーリの顔を、ローは複雑な気持ちで見ていた。
そして結局断る理由もないので、次の日に風の礼拝堂へ向かうことになった。
そこはどこの国も管理していないのだが、魔法学校から結構離れている。
何日か宿を泊まりつつ目的地へ向かうこと数日。
漸く風の礼拝堂へ近づいてきた。
その間2人の間には会話らしい会話はなかった。
というか襲ってくる魔物の数が、日に日に増えているような気がするので会話どころではなかった。
…おれが目覚めて既に半年以上が経っている。流石にそろそろ来るか…
ローは魔物を薙ぎ払いながら、ぼんやりと考え込んでいた。
ユーリを手放さなければいけないという気持ちと、まだ離れたくないと言う気持ちに挟まれ、ローは頭を抱え込んだ。
そんなローの後ろから付いてくるユーリは、何時もどうりだった。
仮にも一線超えたのだから、もう少し意識して欲しいくらいだが、もう忘れたのか、気を遣ってるのか分からなかった。
ローはそっとため息を吐くと、漸く見えてきた礼拝堂へ目を向けた。
ユーリがローのことをどう思っているのかは、結局まだ分からないままだ。
そもそもユーリがローのことをどう思っていようが、別れは必ずやってくる。
当然のことなのに、ユーリの気持ちを知りたいと思っているあたり、ローは自分が英霊だという事を忘れそうになる。
ここ半年、ユーリは何をするにもローを優先していた。
それが同情からくるものかは分からないが、結局ローはそんな彼女に心惹かれてしまった。
魔力の相性もあるが、気づけば彼女のことばかりを考えている。
そんな自分自身に、最早苦笑しか出てこなかった。