第2章 中編
「…お前との契約だが…」
グゥゥゥゥ
ローはユーリとの契約を破棄しようとしたとき、盛大に腹の音がなった。
再び流れる沈黙。
ユーリは今度は別の意味で赤くなっていた。
「す、すいません。もうお昼のようですし、ご飯食べに行きませんか?」
ユーリは苦笑しながらローにそう提案してきた。
どうやら先ほどローが言いかけた言葉は聞こえなかったようだ。
「……」
ローは完全にタイミングを逃し、再びため息を吐くと、彼女の言う通り昼食を取ることにした。
本当は彼女が目を覚ます間、ずっと今後のことを考えていた。
そしてユーリが目を覚ました時の、あの様子に言葉。
完全に無理矢理に近い状態だったのに、どこまでお人よしなんだ。
だからローは、彼女との契約を破棄しようとした。
もうこれ以上、ユーリと一緒にいると最悪な結末を迎えるのが目に見えていたからだ。
だけど、運命なのか偶然なのか、二人の契約はまだ続いている。
いや、本当は少しでも長く彼女と一緒にいたいという、想いがあるからかもしれない。
ユーリと一緒に歩きながら適当に食堂を探すロー。
相変わらずローの食べたいものを優先させるユーリ。
……もし、おれが英霊ではなく、普通の人間だったなら…
ぼんやりと、ローはそう考え込んでいた。
けして叶うことのない夢。
だけど、そう思ってしまうほど、彼女に惹かれてしまっていた。
思い出すのは1000年前のあの出来事。
悪夢は、全てあの日から始まったのだ。