第2章 中編
「…悪かった。後の始末は俺がするから礼拝堂行ってきていいよ」
男はバツが悪そうにローから視線を逸らしながら、周りに倒れている犠牲者達を見た。
言い方は相変わらず偉そうだが仕方ない。
そんな男の言葉にローは無言で睨みつけていたが、言われなくてもそうすると言って、ユーリを抱え上げると一瞬にしてその場から消えた。
ローの言い方も相変わらずだが、彼を怒らせた張本人なので特に何も思わなかった。
「…はぁ、正直羨ましいぜ」
ローが消えると、漸く緊張の糸が切れたのか男はため息を吐いた。
そして男は唇に指を這わせると、先ほどの生気の味を思い出していた。
血を吸っている時にも感じていたが、あの一瞬の口づけだけであれほどの魔力と快楽。
ローが眠りについたら、しれっと彼女に乗り換えてみようか。
あれほどの殺気を浴びておきながら、男はまだ懲りてないのかそんなことを考えていた。
正直彼さえいなくなれば怖いものはない。
まぁ英霊に選ばれた人たちが、その後どうなるかは分からないが。
男は暫く物思いに耽っていたが、目の前の惨状をどうしたものかと頭を悩ませた。
そして取り合えず城へ連絡を入れることにしたのだった。
「……」
施設を後にした二人は礼拝堂へ向かっていた。
その間、2人の間には重い沈黙が流れ続けている。
ユーリの手を掴み黙々と歩くロー。
そんなローに引きづられるように連れていかれるユーリ。
もう少し歩くスピードを落として欲しかったが、彼から流れている不機嫌なオーラにビビって何も言えなかった。
いや、最早不機嫌オーラを通り越して不穏な空気を感じる。
この暗い森の中で、無言で魔物を葬り去りながら進む彼。
ユーリはそんなローの様子に顔を引きつらせながら黙ってついて行ってると、何時の間にか礼拝堂についていた。